今現在、FX初心者の方や、かつて初心者だった頃、相場(チャート)を見るとウズウズして
『よし買いエントリーだ!ポチ』
『あれ?反転したそれ売りエントリーだ!ポチ』
『うーむ、動かないなぁ、よしあがるだろう、それ買いだ!』
と売買を繰り返し、とりあえずポジション持っとかないと不安になるポジボジ病にかかった事が、大なり小なりあるかと思います。
多くのトレーダーが通る道ですが、それを乗り越え、経験を積み、相場の考察というものを知り理解、実践しだすと次によくかかる病気が
『エントリーできない病』です。
考察により相場の先行きをある程度考えられるようになった反面、リスク面も分かってしまう、、
またはレジスタンスラインやトレンドラインなどの任意でひくライン等の精度を気にしすぎて、バランス感覚を崩しエントリー出来なくなってしまう恐ろしい病気です。
今回は中級者はもとより、まだ発病していない初心者の方にも予防注射として、この病に対する処方箋となるようなものをいくつか紹介していきたいと思います。
処方箋1:『わからない』こそが最良の相場の捉え方
まずは相場というものをどう捉えていますか?
考察のスキルやツール、インジケーター次第では予測可能、当てる事ができるものと思っていますか?
まずはこちらを理解しなくても良いのでとりあえず読んでください。
効率的市場仮説
金融経済学における効率的市場仮説 (こうりつてきしじょうかせつ、英: efficient-market hypothesis, EMH) とは、市場は常に完全に情報的に効率的であるとする仮説[1]。ここで言う情報的に効率的であるとは、金融市場における金融商品の価格がその商品の価値を決定づける情報を反映しているという意味である。効率的市場仮説に従えば、株式取引は株式を常に公正な価格で取り引きしていて、投資家が株式を安く買うことも高く売ることもできないということになる。すると、銘柄の選定や市場のタイミングから市場の平均以上の実績を得るのは不可能である[2]。
~以上wiki引用~
※効率的市場仮説は、株、為替などを含めた投資に関する金融経済学のお偉い学者達が必死になって研究し考えだした投資に対する考え方、理論のひとつです。
この仮説はいくつかに分類されているのですが、その仮説を抜粋してみると
- 相場は大半がランダムな動きのように見える
- あらゆる情報は瞬時に価格に反映される
- 先行きは常に二分の一
- インサイダーなどなく常に市場公正な価格で推移する
- 先行きを予測するのは不可能
と言われています。
まるで『相場はどうなるか分からない』と言っているみたいですが、お偉い学者達がこう言っているのです。もちろん僕自身、相場どうなるかわかりません。
そしてこの『分からない』こそが実は究極の答えなんです。
まずは、今日から相場を見る目を、予測して当てるという考え方から『わからないものを見る』に切り替えてみてください。
まずはこの視点のシフトチェンジが第一の処方箋になります。
処方箋2:レジスタンスラインやサポートラインは目印である
処方箋1で、相場は分からないもの。という視点になりました。
人は分からないものを見るたり触る場合、目印や手がかりになるようなものを探します。
これが人間の心理です。
想像してみてください。
あなたが暗闇の空間でどこを目指していけば良いのかわからない時、かすかに灯りが見えれば、それが良い悪いは別にして、目印や手がかりにする筈です。
この目印にする灯を相場に置き換え考えたのが、レジスタンスラインやサポートライン、トレンドラインになります。
レジスタンスラインやサポートラインは、そこに価格が到達したら反発(反転)すると考えがちですが、『相場は分からないもの』として考えた場合、とりあえず皆がそれを意識しそこを目指す“目印的なもの”と考えられます。
あくまでも目印なので、レジスタンスラインやサポートラインで反転するのか、抜けていくかは近づいてみないと分からないという事が言えます。
レジスタンスラインやサポートラインをひく精度
暗闇の中で今いる自分の場所から目印となる灯までの距離と、レジスタンスラインやサポートラインをひく精度と考えてみます。
何も見えない暗闇でかすかに見える灯を頼りにする場合、灯りまでの距離を人によっては10mと感じたり、12mと感じたり、人により誤差が生じます。目印までの距離感は人によって誤差があるという事です。
ではこれを相場に置き換えると、
ローソク足の実体でラインをひくべきか?
ヒゲも意識してラインをひくべきか?
接点を意識してラインをひくべきか?
と悩んだ時、何を意識するかによって現在の地点から目印(ライン)までの距離が変わります。
ローソク足の実体で引いたら距離は少し近くなり、接点で引いたら距離は少し遠くなる、といった違いです。
この距離が暗闇の中で灯までの距離だった場合、1mや2mの誤差ってどうでしょう?
大した誤差ではないと感じませんか?
これがラインをひく精度のひとつの考え方です。
暗闇の中の灯りまでの距離は人によって誤差があるのと同様に、相場のラインにおいても必ず誤差がある。
でもこの誤差は重要ではないという事です。
ラインをひく精度にこだわっていた方は、これで多少気が楽になったのではないでしょうか(笑)
ではこの誤差を実際にはどう相場で処理していけば良いのか第3の処方箋でこれを紹介します。
処方箋3:ゾーンという考え方
レジスタンスラインやサポートライン、接点やローソク足の実体を意識してひくとこんな感じになります。
接点やローソク足の実体で引いたライン
大きくフライングしたヒゲや直近の最高値を意識して考えるとこんな感じになります。
ローソク足のひげや最高値を意識して引いたライン
両者とも考え方としてあり、間違っていません
相場を『わからんもの』と考えた場合、ヒゲでひいたから当たったや実体でひいたから外れたなどの誤差はあまり重要ではありません。
ヒゲと実体の誤差をゾーンとして考えてしまうと、相場参加者が目印や手掛かりにしている一番重要な部分を、ブレることなく知る事ができます。
処方箋4:リスクを把握し受け入れる
まず、大前提として投資にはリスクが伴います。みんな充分理解していると思いますが、まずはこの動かす事の出来ない事実を受け入れないといけません。
その上で、どれくらいのリスクまでなら受け入れられるのかを考えていきます。
処方箋1~3で相場は『わからんもの』と捉え、その中でゾーンを考えました。
今度はこのゾーンという考え方にリスクを組み込んでやると、リスクの度合いをすぐに把握でき、エントリーが怖くなくなります。
ゾーンをリスクに当てはめて考える
先ほどのチャートで言うと、ここがリスクになります。
人間の誤差を考え、ヒゲで捉えたライン、実体で捉えたラインでゾーンを作った場合、そのゾーンの幅は約7pipsです。
ここから
①ラインを抜けるのか?
②停滞するのか?
③引き返すのか?
は誰にもわかりませんが、選択肢は3パターンです。
しかも②番はやがてどちらかに動くので、実質、上がるか下がるかの2択しかありません。
では仮に今回、あらゆる情報から次の行動を『下がる』と選択した場合どういったリスクがあるのかを考えてみましょう
答えは簡単でこのゾーン(人間の誤差)の幅をリスクとして考え、エントリーする時の損切り幅として受け入れられるか受け入れられないかを考えます。
僕の場合なら、エントリーの際のリスク許容範囲は30pipsなんで、問題なく受け入れる事ができます。
この考え方が重要で、どんなに良いなと思うエントリーポイントであってもまず、このゾーンの幅をご自身のリスク許容範囲に当てはめて考えると、そのリスクが大怪我になるのか、擦り傷程度かがゾーンの幅でわかります。
投資には必ずリスクはありますから、そのリスクが擦り傷程度とわかっている場合のみエントリーすれば怖さも半分以下になりますし、大怪我になりそうなポイントであれば、エントリーを控えればいいのです。
以上が、エントリー出来ない病を克服する4つの処方箋です。
最後にこの処方箋を使った実践例を紹介します。
【実践例】4つ処方箋を使ってエントリー出来ない病を克服する流れ
手順①
まずは相場を『先行き分からないもの』と考えて、参加者が手掛かりにする灯(今回は二本のレジスタンスライン)からゾーンを作る。
手順②
ゾーンの幅を確認する。
(今回は7pips)
手順③
- 自分のリスク許容範囲 < ゾーンの幅 ⇒ 取引しない
- 自分のリスク許容範囲 > ゾーンの幅 ⇒ 取引してOK
今回、仮に自分のリスクの上限が30pipsとした場合、ゾーンの幅は7pipsなので、
30pips(自分のリスク許容範囲)> 7pips(ゾーンの幅)
↓
となるので、売りの取引をしてもOKと考える。
手順④
リスクを決め受け入れて、エントリー
- 損切幅(リスク):20pips
今回はゾーン(約7pips幅)+αをリスクとし、ゾーンの少し上に損切を設定 - 利益確定:20pips
二段下のサポートラインを利益確定の目安に設定
結果
ゾーンを少し抜けてから下がり利確ライン手前まで下がりました。
【最後に】
相場の捉え方を『分からないもの』とシフトチェンジをして、『エントリーできない病』に対する処方箋を紹介しました。
僕も以前は相場は予測のやり方次第で当てる事が可能なものだという考え方でした。
相場の先行きを予測し、当てる事に意義を見出し、外れると考察力が足りないのだとやっきになり、レジスタンスラインやサポートラインはぴったり当たらないと納得いかず、ラインをひく事に過敏でした。
しかしこの考え方に至ってからは『分からないもの』を相手にするんですから『考察やラインが当たるか外れるか』という事は全く意味の無いものになりました。
相場の考察は先行きを当てる為にするのではなく、相場参加者が手掛かりや目印にするゾーンを探す作業と改めたことで、考察やラインに変なバイアスがかからなくなりました。
ここで言うバイアスというのは、考察やラインは考えれば考える程、自分の都合の良い方へ解釈し考えてしまう人間の性の事です。
先述の人間の誤差同様、人間の心理なので仕方がありませんが、ここを出来るだけフラットな視点を保つ為にも、この捉え方やゾーンという考え方が、『わからんもの』から利益を得ていく事において大切になってきます。